ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?基礎から実践まで解説

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「ABMという言葉を聞くが、自社に関係あるのかわからない」「大企業向けの手法では?」——ABM(アカウントベースドマーケティング)に興味はあるものの、具体的にどう始めればいいかわからないBtoB企業のマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。

この記事では、ABMの基本概念からリードジェネレーションとの違い、実践ステップ、そして中小BtoB企業でも始められる「ミニABM」の方法まで解説します。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?

ABM(Account Based Marketing:アカウントベースドマーケティング)とは、自社にとって価値の高いターゲット企業(アカウント)を特定し、その企業ごとにパーソナライズされたマーケティング施策を展開するBtoBマーケティング戦略です。

従来のマーケティングが「広くリードを集めて、その中から有望な見込み顧客を選別する」アプローチであるのに対し、ABMは「最初から狙うべき企業を決めて、その企業に最適化されたアプローチを行う」という逆のアプローチを取ります。

ABMの基本的な考え方をまとめると、以下の3点です。

  • ターゲットアカウントの選定: 自社の理想的な顧客像(ICP: Ideal Customer Profile)に基づいて、アプローチすべき企業を絞り込む
  • パーソナライズされたアプローチ: ターゲット企業の課題や状況に合わせた個別のコンテンツやメッセージを作成する
  • マーケティングと営業の連携: マーケティング部門と営業部門が同じターゲットリストを共有し、一貫したアプローチを行う

ABMとリードジェネレーションの違い

ABMと従来のリードジェネレーション(リード獲得型マーケティング)は、アプローチの方向が正反対です。

比較項目 リードジェネレーション ABM
アプローチ 広くリードを集める(ファネル型) 狙う企業を絞る(スピア型)
ターゲット 不特定多数 → 選別 特定企業 → 深耕
コンテンツ 汎用的 企業ごとにパーソナライズ
KPI リード数、MQL数 ターゲット企業のエンゲージメント、商談化率
営業との関係 マーケ→営業の一方通行 マーケと営業が最初から連携
向いている商材 低〜中単価、短い商談期間 高単価、長い商談期間
ROI 測定しやすいが、質にばらつき 高ROI(ITSMA調査で87%が「最もROIの高い施策」と回答)

重要なのは、ABMとリードジェネレーションは「どちらかを選ぶ」ものではなく、組み合わせて活用するのが効果的だということです。リードジェネレーションで広くリードを獲得しつつ、特に重要なターゲット企業にはABMで個別アプローチする二段構えが実践的です。

リード獲得施策についてはBtoBリード獲得の方法10選で詳しく解説しています。

ABMが注目される3つの理由

理由1: BtoBの購買行動が変化している

BtoBの購買プロセスにおいて、購買担当者が営業に接触する前にオンラインで情報収集を完了する割合が増加しています。そのため、ターゲット企業がオンラインで情報収集をしている段階から、パーソナライズされたコンテンツで接点を持つABMの重要性が高まっています。

理由2: マーケティングと営業の分断が課題になっている

多くのBtoB企業で、マーケティング部門が獲得したリードを営業部門が「質が低い」と感じ、フォローしないという課題が発生しています。ABMは最初からマーケティングと営業が共同でターゲットを選定するため、リードの質に関するギャップが生まれにくい構造です。

理由3: テクノロジーの進化でABMが実行しやすくなった

以前はABMの実行に高額なツールと専任チームが必要でしたが、CRM/SFAの進化やAIの活用により、中小企業でもABM的なアプローチが実行可能になっています。

ABMの実践5ステップ

Step 1: ICP(理想的な顧客像)を定義する

まず、自社にとって最も価値の高い顧客の特徴を定義します。

ICPの定義項目:

  • 業界: 自社の製品/サービスが最も活きる業界
  • 企業規模: 従業員数、売上規模
  • 課題: 自社が解決できる具体的な経営課題
  • 導入予算: 期待できる受注単価
  • 意思決定構造: 決裁者の役職、関与する部門数

既存の優良顧客を分析し、共通する特徴を抽出するのが最も確実な方法です。

Step 2: ターゲットアカウントを選定する

ICPに基づいて、具体的なターゲット企業のリストを作成します。

ターゲットアカウントの分類:

  • Tier 1(最重要): 10〜20社。完全にパーソナライズされたアプローチを行う
  • Tier 2(重要): 50〜100社。業界/課題別にセグメントしたアプローチ
  • Tier 3(準ターゲット): 100〜500社。リードジェネレーションとの併用

CRM/SFAの活用方法はSFAとCRMの違いとは?を参照してください。

Step 3: ターゲット企業のインサイトを収集する

選定したターゲット企業について、以下の情報を収集します。

  • 経営課題(IR資料、ニュースリリース、採用情報から推測)
  • 組織構造と意思決定者
  • 現在使用しているツールやシステム
  • 競合との取引状況
  • 業界特有のトレンドや規制

Step 4: パーソナライズされたコンテンツを作成する

ターゲット企業の課題に直接訴求するコンテンツを作成します。

Tier 1向けコンテンツ例:

  • その企業の課題に特化したケーススタディ
  • 業界レポートのカスタマイズ版
  • ROI試算シート(その企業の数値を使用)

Tier 2向けコンテンツ例:

  • 業界特化のホワイトペーパー
  • 同業界の導入事例集
  • 業界別のソリューション紹介ページ

Step 5: マルチチャネルでアプローチする

作成したコンテンツを複数のチャネルで届けます。

  • メール: パーソナライズされたナーチャリングメール
  • Web広告: LinkedIn広告で企業名/役職でターゲティング
  • コンテンツ: ターゲット企業の課題に合ったブログ記事やWP
  • 営業アプローチ: インサイドセールスによる直接アプローチ
  • イベント: ターゲット企業向けの限定セミナー

MAツールの活用についてはMAツール比較7選も参考にしてください。

中小BtoB企業のための「ミニABM」の始め方

「ABMは大企業向けでは?」と感じる中小企業の方も多いでしょう。しかし、ABMの考え方を小規模に適用する「ミニABM」なら、専用ツールなしでも始められます。

ミニABMの実践方法

1. ターゲット企業を10社選ぶ

既存顧客の中から「このような企業をもっと増やしたい」と思える企業の特徴を洗い出し、その特徴に合致する新規企業を10社リストアップします。

2. 各企業の情報をスプレッドシートにまとめる

10社それぞれについて、業界、課題、意思決定者、最近のニュースなどをGoogleスプレッドシートに整理します。

3. 企業別のアプローチメールを作成する

汎用テンプレートではなく、各企業の課題に言及したパーソナライズメールを作成します。「御社の○○という課題に対して」と具体的に書くだけで、反応率が大きく変わります。

4. 月1回、ターゲットリストを見直す

10社のうち、反応のあった企業にはアプローチを強化し、反応のない企業は入れ替えます。

このミニABMだけでも、汎用的なリードジェネレーションのみのアプローチと比較して、ターゲット企業からの商談化率を2〜3倍に改善できる可能性があります。

よくある質問

Q. ABMを始めるのに必要な予算はどのくらいですか?
ミニABM(10社程度のターゲティング)であれば、追加予算なしで始められます。本格的なABMプラットフォーム(Demandbase、6sense等)を導入する場合は、月額20〜50万円程度が目安です。

Q. ABMとインバウンドマーケティングはどう使い分けますか?
インバウンドマーケティングで広くリードを獲得しつつ、特に重要なターゲット企業にはABMで個別アプローチする併用が最も効果的です。ABMはインバウンドの「補完」として位置付けるのが現実的です。

Q. ABMの効果測定はどのような指標で行いますか?
ターゲットアカウントのエンゲージメント率(メール開封率、サイト訪問回数)、ターゲット企業からの商談数、商談化率、受注率、受注単価で測定します。リード数ではなく「ターゲット企業との関係の深さ」を重視します。

Q. ABMにCRM/SFAは必須ですか?
必須ではありませんが、ターゲット企業との接点を一元管理するためにCRM/SFAがあると効率的です。少なくともスプレッドシートでターゲット企業の情報とアプローチ履歴を管理する仕組みは必要です。

Q. ABMは営業チームがないと実行できませんか?
営業チームとの連携がABMの効果を最大化しますが、マーケティング担当者1人でもミニABMは実行可能です。特にメールやコンテンツによるアプローチは、マーケティング主導で進められます。

まとめ

  • ABMは「狙うべき企業を決めて、その企業に最適化されたアプローチを行う」BtoBマーケティング戦略
  • リードジェネレーションとは「広く集める vs 狙い撃ち」のアプローチの違いがある。両方を組み合わせるのが効果的
  • 実践は5ステップ: ICP定義→ターゲット選定→インサイト収集→コンテンツ作成→マルチチャネルアプローチ
  • 中小企業でも「ミニABM」(10社ターゲティング)なら専用ツールなしで始められる
  • マーケティングと営業が最初から連携することが、ABM成功の最大のポイント
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